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【お仕事コラム】ミライを切り拓く!原子力のお仕事インタビュー
お仕事コラムとは?
中高生の方々に向けて、原子力や放射線に関連する業界やお仕事について、より深い興味・関心・理解を得られるような情報を提供することを目的とした、お仕事紹介インタビューです!
第1回のインタビューは「一般社団法人日本原子力産業協会(JAIF)の石井敬之さん!」
お仕事紹介(何のお仕事をしているの?)
原子力産業新聞の編集長をしています。原子力産業新聞は、原子力のエネルギー利用から、医学利用、産業利用、農業利用に至るまで、原子力の魅力を伝えるWebメディアです。編集長として、記者や外部の先生方の原稿をチェックしたり、時には自分自身でも記事を執筆しています。全コンテンツを無料で公開していますので、是非アクセスしてみてください!
どうして日本原子力産業協会(JAIF)で働こうと思われましたか?
一橋大学社会学部でプロパガンダについて学び、卒業したら(代理店ではない)広報の仕事に就こうと考えていました。日本原子力産業協会(当時の名称は日本原子力産業会議)を選んだのは、当時はインターネットもなく、大学の就職課で知ったのがきっかけです(笑)。就職してからは広報どころか、海外調査や、国際関係の部署に配属され、地道にレポートを発行していました。その後ようやく広報部門に配属され、さまざまなウェブコンテンツを立ち上げることができました。
その時の経験が、現在のお仕事に生きていますか?
そうですね。原子力産業新聞は、国内だけでなく、海外の原子力に関する情報が豊富なのが強みです。海外調査や国際部での勤務で、さまざまな国の原子力にかかわる情報に触れてきたことが活きていると思います。また紙媒体を発行する時は、文章を書くだけでなく、自分自身で写真を撮影し、印刷に至るまでの全工程を管理していました。広報部門でも、YouTube動画を制作してきました。情報の受け手にいかにわかりやすく伝えるかを、人に頼らず自分の手で工夫し、失敗を重ねてきたことで、制作全般の仕事が身についたのだと思います。
大学は文系だったそうですが、現在のお仕事に就く際に原子力の知識がなくても大丈夫でしたか?
むしろ「原子力について知らない」という一般の人と同じ目線が、私の仕事では役立っていると思います。詳しく知らないからこそ、取材対象に素朴な疑問を投げかけることができ、一般の人にも伝わるマニアックになりすぎない紙面づくりに活きているかもしれません。知ったかぶりをせず、自分が知らないということを、素直に認めることが大事だと思いますね。
学生時代に熱中していたことはなんですか?
小説を書いたり、友人と撮る8ミリ映画の脚本を書いたりしていました。いろいろな文学賞に応募し、一時は小説家になることも夢見ていました。要はダメだったわけですが、たくさん本を読み、さまざまな作家の文体や表現を学んだことなどが、結果として今に役立っていると思います。現在も居合道や、カメラ、自転車、エレキギター、尺八、料理などさまざまな楽しみがあり、時間がまったく足りません。
どんな学生でしたか?
反骨というとかっこいいですが、へそ曲がりです。 皆が東大と言えば一橋を選び、皆が電博(電通と博報堂)と言えば原子力を選ぶような、メジャーよりもインディーズを好む、へそ曲がりな学生でした。就職する直前は原子力の評判が地に堕ちておりましたので、「オレが原子力業界を変えてやる」との根拠のない自信で、満ち溢れていました。結果として見れば、まだまだ道半ばといったところでしょうか(笑)でも時として、こうした計算のできない頭の悪い姿勢も大切ですよね。皆が皆、計算高く動いていたら、面白くないじゃないですか。
やりがいを感じるのはどんな時ですか?
2019年に新聞の編集長となってまず初めに、Webのリニューアルを実施しました。スマホ用にUIを刷新しただけでなくSNS対応を進め、拡散を容易にしました。SNS経由でさまざまな反応をいただくと、達成感があります。生の声を聞くと、私も含め記者は嬉しいものです。また、編集部で書籍を発行することもあります。Web時代だからこそ、手に取れる形になるものができたときは喜びもひとしおです。あまり売れていませんが。
原子力に関して、個人的に興味のあることはなんですか?
ひとつは小型モジュール炉(Small Modular Reactor:SMR)です。建設コストが抑えられ、コミュニティの電力需要に応じた柔軟な運用ができ、遠隔地の多いカナダなどで数多く計画されています。導入の障壁が低いので、発展途上国でのSMRの運用も期待されています。ただしSMRは日本には不向きですね。
SMR関連のデベロッパーを取材すると、若い学生さんが多いこともあってエキサイティングな雰囲気を感じることができます。最近ですと、原子力を医学に応用した核医学の分野にも、同じような熱いものを感じています。
最後に学生さんにメッセージをお願いします。
学生時代には何かひとつと決めてしまわず、いろいろなことに手を出したほうがいいのではないでしょうか。社員みんなが同じ知識やスキルしかもっていなかったら、会社も新しいことができなくなります。ほかの人と違う経験が役に立つ場面が必ず来ます。私も紆余曲折あって編集長をしていますが、学生時代や就職後の経験すべてが現在に活きていると感じています。それと、成功からは何も学べませんが、失敗からは多くを学ぶことができますよ。
(今回のインタビューのまとめ)
学生時代の思い出から、現在の仕事に至るまでをユーモアたっぷりに語る石井さん。
その一方、何事にも全力で打ち込み、常に新しい情報の伝え方を模索している姿が印象的でした。
ライタープロフィール
小南 哲司/フリーライター。医療系出版社勤務を経てライターに。医療系記事を中心に執筆。