解説

その他

放射線の人体への影響


放射線による健康影響には二種類あります。 一つは、大量の放射線を短期間に受けることで吐き気や脱毛などの症状が出る影響で、 「確定的影響」と言います。
放射線を受けると、細胞内の染色体の中のDNAが損傷を受けることが分かっています。 人体は損傷を修復する機能を持っていますので、受けた放射線の量が少ない場合は、 DNAの損傷が自然に修復され、その影響が病気として現れることはありません。 しかし、一度に受けた放射線の量が多い場合は修復が間に合わず、細胞が変化し、 図のような症状が出ます。
確定的影響では、「しきい値」という症状ごとに影響が出はじめる線量があることが 分かっています。それ以下の線量では症状が認められていません。
なお、受けた放射線の量が100ミリシーベルト以下の場合は、 これらの症状は認められておらず、例えば、妊娠中の方でも、一度に受けた放射線の量が 100ミリシーベルト以下であれば、胎児に影響が出ることはないとされています。
もう一つ、放射線を被ばくして数年以上経ってからガンなどを発症することがあります。 これを「確率的影響」と言います。
確率的影響では、受けた放射線の量に比例して将来がんになる確率が高まります。
確率的影響には、しきい値の線量はないと考えられています。
広島・長崎の被ばく者の調査結果など、国際的に認められている科学的な知見では、 100ミリシーベルト以下の放射線では、 喫煙や飲酒などの個人の生活によって自然にがんになるリスクと比べても区別することが できないほど、がんになるリスクは低いとされ、低いレベルの被ばくによってがんになるリスクの明らかな増加を証明することは難しいとされています。
私たちが日常生活の中で受ける自然放射線や病院などで受ける人工放射線の数値、からだに影響が出る数値の大きさはどれぐらいなのかを知っておきましょう。
たとえば、私たち日本人は日常の暮らしの中で自然放射線により、 1年間に平均2.1ミリシーベルトの放射線を受けています。
しかし、世界にはイランやインドなど日本の数十倍高い自然放射線を受ける地域もありますが、住民の方を対象としたこれまでの疫学調査では、がん患者が多いという報告はされていません。
そのほか、私たちはCTやエックス線などの医療行為によっても被ばくしており、 日本人は1年間に平均3.9ミリシーベルト被ばくしていると推定されています。
このように、私たちは自然や医療などから日常的に放射線を受けています。
放射線は医療のほか工業や農業などにも活用されているため、 それらを取り扱う人たちの被ばく限度も決められています。
日本では、放射線の影響について「どんなに少ない量でも受けた量に比例してがんで亡くなる人が増えるリスクがある」とする国際放射線防護委員会の考え方を用いています。
つまり、科学的には、100ミリシーベルト以下の放射線によるがんの増加が証明されていなくても、可能な限り、不必要な放射線被ばくを少なくするという「放射線防護」の目的から、 リスクがあるものと仮定して、被ばくによるリスクを減らすための対策がとられているのです。





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