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【お仕事コラム】ミライを切り拓く!原子力のお仕事インタビュー

掲載日:2024.12.25

お仕事コラムとは?

中高生の方々に向けて、原子力や放射線に関連する業界やお仕事について、より深い興味・関心・理解を得られるような情報を提供することを目的とした、お仕事紹介インタビューです!
今回はインタビュアーとして、東京学芸大学附属国際中等教育学校の皆さんにご協力いただきました。



レガラド真理子さんと東京学芸大学附属国際中等教育学校の皆さん


第7回のインタビューは「株式会社三菱総合研究所のレガラド真理子さん!」



お仕事紹介(何のお仕事をしているの?)

シンクタンクである三菱総合研究所で研究員をしています。シンクタンクとは、官公庁や自治体、民間企業などがもつ「お困りごと」(=社会課題)に対して、調査・研究・提言を通してお助けしていく会社です。そのなかで、私は社会インフラ事業本部・原子力イノベーショングループという部署で、原子力関連の幅広いテーマ、例えば福島第一原子力発電所の廃炉1 や次世代革新炉2 、放射線の利活用3 、放射性廃棄物の処理・処分などに関する調査・研究・提言を行っています。当社の研究員は複数のテーマを担当しますので、広い視野に基づいた社会課題解決に関わることができます。原子力イノベーショングループは官公庁をお客様とした仕事が多く、国の政策立案に携わる機会もあります。



シンクタンクはどのようなプロセスで調査・研究・提言をしていくのですか?

まずは文献調査や社内での議論により私たちが解決すべき課題を整理し、課題解決に向けた戦略をたてます。その後、大学・研究機関の専門家などの社外有識者へのヒアリングや意見交換を通じて足りない情報を収集し、得られた情報を再度整理して私たちの考察を加える過程を経て、報告書としてまとめたものをお客様に提出します。社内の力だけで完結することはほとんどありません。 何より、「この分野、このテーマはあの先生が詳しい」といった社外有識者のネットワークを持っていることが、私たちの強みでもあります。国内に限らず、海外へと調査に出かけ、海外の有識者に直接インタビューもします。 また、これまでに携わってきた仕事で蓄積した知見や経験に基づいた提言をまとめ、社会全体に向けて自主的に情報発信することもあります。


レガラドさんが執筆したコラム〈画像クリックでコラムに移動します〉


インタビューや調査で海外に行かれるとのことですが、原子力関連の取り組みで日本と違いを感じることは何ですか?

海外では先進的な事例に接することが多いです。機器の設計思想や運用方法などが日本と大きく異なっています。そのため、日本にはないシステムを海外ではどのように上手く運用しているのかを調査すると、将来、日本でより良い形で運用するために、非常に参考になる情報を得ることができます。また、福島第一原子力発電所の事故の影響などもあり、海外と比べると、日本では原子力関連の人材育成が大きな課題となっていることも特徴です。


学生たちの質問に対し、丁寧に回答するレガラドさん


学生時代どのようなきっかけで原子力に興味をもつようになったのでしょうか?

中学生の時、福島第一原子力発電所の事故がありました。その時自分なりに興味をもって、原子力についてインターネットなどで調べ始めたのがきっかけです。その時は「そもそも原子力は人間が取り扱える技術なのか」という疑問がわきました。大学は理系に進んで原子力の研究室に所属し、その後現在の仕事に就きました。中学生でショッキングだった出来事が印象に残って、そのまま仕事にしてしまった感じですね。大学に残って研究するのではなく、シンクタンクの研究員になったのは、学問として原子力の一部のみを突き詰めるよりも、原子力の幅広いテーマに携わっていけるスペシャリストかつゼネラリスト4 的な仕事が、私の性格に合うと思ったためです。



原子力は難しいものという印象があります。人々に理解してもらうためにはどうしたらよいでしょうか?

原子力について学ぶ授業などを、学校教育でもうちょっと増やしてもいいのかな、と思います。例えば原子力発電の仕組みを授業で習っていれば、核分裂という現象がどうやって発電につながって、私たちの生活を支えるエネルギーになるか理解できるようになるでしょう。また、放射線に関する基礎的な知識を若いうちに身につけておくことが、ニュースやインターネット等で原子力の情報に触れるうえで、望ましいのではないかと考えています。



最近の原子力の動向について、どのように感じていますか?

世界のエネルギー情勢、例えば電力需要の増加や、脱炭素電源が求められていることにより、原子力を電源として社会で活用しようという考えが最近高まっていると思います。福島第一原子力発電所の事故などの課題もありましたが、原子力という技術がフラットな目でとらえられ、社会にとって必要なものと認識されているのはうれしいことです。



日本はこれから原子力とどのように向き合っていくべきでしょうか?

日本は資源が少ない国です。そこに原子力発電というものができて、燃料をつくったり、処分をしたりという技術が培われてきました。資源の少なさをカバーするために、これまで確立した技術を日本の強みとしてさらに伸ばし、エネルギー確保に活かせるようにしていくことが一つの方向性です。 また、もともと日本は、原子力エネルギーを国内でリサイクルすることを目指してきました。今後、エネルギー源を国内で保有して自給自足し、日本の豊かさを維持するために原子力について積極的に研究開発を行い、技術力を高め、活用していくべきではないかと考えています。



(今回のインタビューのまとめ)
中学生の時から原子力に興味をもち、そのまま現在のお仕事につながっているレガラドさん。
学生の皆さんに、一見難しい原子力をわかりやすく丁寧に伝えようとしている姿が印象的なインタビューでした。




ライタープロフィール

小南 哲司/フリーライター。医療系出版社勤務を経てライターに。医療系記事を中心に執筆。



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1運転の終了した原子力発電所を解体・撤去する作業のこと。

2今ある原子炉を基に、安全性や燃焼効率の向上など、革新的な技術を導入した原子炉のこと(お仕事の詳細はこちら)。

3がんに対する放射線治療など(詳細はこちら)。

4多くの分野に携わり、幅広い知識を持っている人のこと。


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