コラム
笑いは万薬の長
福島で、ハンドマッサージ、どうして?
宇野 賀津子 氏 《(公財)ルイ・パストゥール医学研究センター インターフェロン・生体防御研究室長》
(『原子力文化2014.11月号』掲載)
福島で、ハンドマッサージ、どうして?
3.11の原発事故以降、福島でずいぶんとお話ししたが、2012年の春以降、福島での講演会や学習会では、可能な限り最初にハンドマッサージを紹介してから、お話を始めています。
2011年秋に日本学術振興会の放射線計測・説明会チームの一員として行ったときの経験からお母さん向けの講演会をやりたいと思い、2012年4月福島県庁にその協力要請に行った時のことです。「若いお母さんたちを対象とした学習会を、日本学術振興会の支援で行ないたいので、協力を」とお願いしたら、長尾トモ子福島県会議員から「今、福島のお母さん方はストレスがたまっているので、えらい先生に来ていただくよりアロマの方が歓迎です」と言われました。
そのとき、20年前老人病院で入院中のおばあちゃんらに化粧療法をやって免疫機能が上昇することを確認した化粧療法の経験を一番に思いました。そこで、その研究を一緒にした、ナリス化粧品の谷都美子部長に相談、彼女はハンドマッサージやアロマセラピーを提案してくれ、会社は福島支援用に一万人分の化粧乳液を用意してくれました。ナリス化粧品は大阪市福島区にあって、3.11後、「福島」という住所から輸出化粧品が風評被害で苦労した経緯があったからです。
学振チームでのハンドマッサージは実現しませんでしたが、日本赤十字社に提案したら、被災者が喜ばれるなら、何でもOKとの返事で、その後、日赤の講演会では、ハンドマッサージやリラクゼーションを講演会の前に取り入れました。谷さんの指導よろしく、私もハンドマッサージを指導しています。
たっぷりの乳液を手のひらにとって、腕から手にかけてゆっくりやさしくマッサージします。手のひら、続いて指の側面をはさむようにしてもみほぐします。コツはゆっくりとすることです。1秒間4センチとか。してもらうのはもちろん気持ちが良いですが、する方もそのうちに身体が暖かくなってリラックスできます。学習会でハンドマッサージをやる時、隣同士ペアになってというと、初めて会った人同士でも、5分もハンドマッサージをすると会話がはずみます。そして心なしか、私のお話もよく理解していただけるようです。
この夏、チームあいんしゅたいんで福島へ行ったときも、ハンドマッサージからはじめました。特に対話型集会では、ハンドマッサージをしながら、不安に思っていること、聞きたいことをお聞きすると、あとの話がはずみました。まだ免疫機能は測っていませんが、予備的にハンドマッサージ前後でストレス指標として唾液アミラーゼを測ったら、低下しているとのデータも得られました。学問的裏付けもとりながら今しばらく、ハンドマッサージ付き学習会をして行こうと思います。
(『原子力文化2014.11月号』掲載)
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