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ニュースでよく聞くあのはなし 電力不足?!なぜ電力需給ひっ迫が起きる?

「そもそも」が口ぐせ★ニュースに詳しい♪「そもそも姉」がザックリ解説!
 
掲載日2023.1.20
 

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WEBでしっかり解説!電力需給ひっ迫とは?

 

2022年3月、政府から初めて「電力需給ひっ迫警報」が発令されました。また、冬の厳しい寒さが予想されるなか、電力の安定供給のために2022年12月1日から2023年3月末までの期間、政府による「節電要請」がなされています。この電力の「不足」は、東日本大震災以降、日本の基幹電源のひとつ、大黒柱ともいえる原子力発電所の多くが停止していることで安定的な電力供給が確保できないことが大きな原因です。

 

また、ロシアによるウクライナ侵攻以前より、世界各国での高まる天然ガス需要によりロシアから天然ガスの供給を受けているヨーロッパ諸国では、天然ガスの価格高騰や供給不安が発生しています。実は日本も天然ガスの一部をロシアに依存しているため、天然ガスの価格高騰や供給不安とは無関係ではいられません。さて、ここでは電力の需給ひっ迫とその対策などについて少し具体的に見ていきましょう。



(1)電気の「大黒柱」が失われると…

2011年3月11日、東日本大震災が東日本を襲いました。これにより、日本の原子力発電所は全て停止となり、10年以上経った現在も多くの原子力発電所が停止したままとなっています。それまでは、日本の電力は安定的に供給されていたため、夏季、冬季の電力需要が大きく増大した際でも、電力需要のひっ迫が懸念されることはほとんどありませんでした。


また、脱炭素化を進めるために、老朽化した火力発電所やCO2を比較的多く排出する石炭火力発電所の廃止が進んだことも電力不足の一因として挙げられます。このような状況に加え、2022年、ロシアのウクライナへの侵略が世界のエネルギー情勢を一変することになりました。また、ヨーロッパ諸国の風力発電の稼働率が、2020年の秋以降低下したことがきっかけで、発電を代替する天然ガスへの需要が急激に高まったことなど、複合的な要因がガス不足、電力不足、そしてエネルギー価格高騰の背景として挙げられます。


これまで電力の安定供給を支えてきた原子力発電や天然ガス火力発電、石炭火力発電などのベース電源「大黒柱」に暗雲が立ち込めてきたと言えます。

(参考:東日本大震災前稼働していた60基の原子力発電所は2023年1月4日時点で現在わずか10基が再稼働している状況です)


出典:資源エネルギー庁HP



(2)エネルギー価格の高騰

2020年のヨーロッパ諸国の風力発電への依存度はおおよそ14%(IEA:国際エネルギー機関 2020年)で、今後ますます増加する傾向にあります。ヨーロッパ諸国は環境意識が高いこともあり、CO2排出削減の切り札として再生可能エネルギー、特に風力発電に力を注いでいるのです。このように電力需要の大きな割合を支えれば支えるほど安定的な電力供給が必要です。しかし、気候変動による突発的な稼働率の低下が生じた場合にはその代替、埋め合わせは容易なものではありません。ちなみに、その代替とは火力発電に頼らざるを得ない状況と言えます。ヨーロッパ諸国の場合、CO2排出の少ない火力発電となると必然的に天然ガスとなりますが、天然ガスはロシアからのパイプラインでの輸入に頼っているのが現実です。



電力消費量に占める自然エネルギーの割合(2021年)

出典:IEA,Monthy Electricity Statistics-Data up to December 2021


一方、中国では時を同じくして、北京オリンピック開催(2022年2月)に向けて「綺麗な青空」を確保するために、主力電源である石炭火力発電所を極力停止するという措置を講じました。結果として、クリーンな天然ガス火力発電の需要が急増した時期とも重なります。


このような複合的な国際情勢が、天然ガス価格の高騰を引き起こし、そして同時に供給不安を引き起こす結果となりました。日本も実はロシア産の天然ガスに9%(2021年)、石炭もロシアに11%(2021年)依存しています。


このように原子力の停止、老朽化した火力発電所やCO2排出の比較的大きな石炭火力発電所の閉鎖などの理由による供給力の低下と共に、天然ガスや石炭の高騰などにより日本の電力を支えている「大黒柱」は危機に瀕していると言えます。



天然ガス価格の推移

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書2022」



(3)需要と供給の調整(再生可能エネルギーの影響)

電気は需要と供給の量が常に一致していないといけません。もし、それが崩れると大停電になりかねません。ところで、我々の日常生活を振り返ってみましょう。学生も社会人もみな夕方自宅に戻ります。そして多くの家庭で、冬であれば暖房を、夏であれば冷房のスイッチを「オン」にします。特に冬場の電力需要は大きく、夕方から夜にかけては電力が不足する「魔の時間帯」と言えるのです。日本中の家庭で、同じように空調のスイッチが数時間の間に立て続けに「オン」にされますが、頼りにしていた太陽光発電はこの時間帯はほとんど発電することができません。


さらに、世の中の電化が進むにつれて自宅に帰ると、空調のみならず、パソコンやテレビ、夕食の準備などでの電気調理器によって夕方の電力需要は年々急増の傾向にあります。一方で、太陽光発電の導入が進むにつれて日中の電力需要は太陽光発電が多くの部分の賄うことができるので電力会社が供給する実質的な電力は年々下がりつつあります。このような傾向を図として示すと以下のような図になります。この図は「アヒル(ダック)」を横から見たように見えませんか? このような電力需要の傾向を示す曲線は最近「ダックカーブ」と呼ばれています。



カリフォルニア州の実質電力需要推移

出典:California Independent System Operator



このように電力の需要が大きく変化しつつあるなかで、いつでも確実に発電し電力を供給することができるベース電源が不足することも夏・冬の夕方から夜にかけての電力が不足する大きな原因となっています。

 

私たちの生活に必要な電力を確実に確保するためには、安定かつ確実な発電方法を手放すわけにはいきません。原子力発電所の再稼働が解決のカギを握っているといえるのではないでしょうか。



【監修】 株式会社 ユニバーサルエネルギー研究所 代表取締役社長 金田 武司 氏

工学博士。東京工業大学大学院エネルギー科学専攻博士課程修了。(株)三菱総合研究所勤務を経て、2004年(株)ユニバーサルエネルギー研究所を設立。2018年8月に新著『東京大停電』を出版。

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