解説 ホーム > 解説 > ニュースがわかる!トピックス > 福島第一原子力発電所の事故による 健康や食品への影響は? 復旧の状況は? ニュースがわかる!トピックス 福島第一原子力発電所の事故による 健康や食品への影響は? 復旧の状況は? ニュースがわかるトピックス 1.UNSCEAR 2013年報告書 2014年4月2日に、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)から、福島第一原子力発電所の事故に関する「2011年東日本大震災後の原子力事故による 放射線被ばくのレベルと影響」という報告書が公表されました。 世界18か国から、さらにはさまざまな国際機関から派遣された専門家が多数参画し、放射性物質の拡散や住民・作業員の被ばく線量の評価とその健康への影響の推定など、多岐にわたる内容をまとめています。 放射性物質の放出について 事故によって大気中へ放出されたヨウ素131の総量は、約100~500ペタベクレル(ペタは千兆)の範囲、セシウム137は6~20ペタベクレルの範囲であったと推定しています。これは、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故における推定放出量のそれぞれおよそ10%と20%になります。 また、海洋へ直接放出されたセシウム137の総量は、約3~6ペタベクレルの範囲で、ヨウ素131はその約3倍の10~20ペタベクレル程度であるとしています。 住民の被ばく線量の評価と、健康への影響について 福島県で事故の影響を最も受けた地域の成人住民が事故発生から1年間に受けた放射線の実効線量は、約1~10ミリシーベルトの範囲で、放射線の影響を受けやすい1歳児は成人の値よりも約1.5倍から2倍ほど高いと推定しています。 このレベルの被ばくは、がんのリスクがわずかに高まる可能性はありますが、その割合は日本人の自然発生がんのリスクに比べ小さすぎるため、集団全体として検出することはできないだろうと指摘しています。 また、甲状腺の吸収線量は、特に発電所から20km圏内の住民は迅速な避難によって、受ける線量を大幅に低減することができたとし、成人で最大35ミリグレイ程度、1歳児で最大約80ミリグレイ程度と推定しています。ただし、この推定値には不確かさがあり、報告された実測値からみると最大で5倍程度高く推定されている可能性があります。 甲状腺への影響については、吸収線量がチェルノブイリ原子力発電所事故後の線量より大幅に低いため、福島県でチェルノブイリ原子力発電所の事故時のように放射線に誘発された甲状腺がんが多数発生すると考える必要はないとしています。 福島県が実施している超音波検査で、比較的多数の甲状腺所見が見つかっていることは、事故の影響を受けていない他の地域で行われた同様の調査結果と一致していることから、このような集中的な健診がなければ通常は検出されなかったであろうとされています。そのため、甲状腺所見が今後も比較的多く見つかると予測しています。 このほか、胎児や幼少期・小児期に被ばくした人の白血病や、若年期に被ばくした人の乳がんについても、統計学的な差として自然発生率と識別できるレベルで発生率が上がることは予測されず、妊娠中の被ばくによる流産、周産期死亡率、先天的な影響、認知障害、遺伝的な影響などが起こることもないと述べています。 一方、UNSCEARでは、これまでに観察された最も重要な健康影響は、心理的・精神的な影響であるとしています。これは、地震や津波によって家族・友人などかけがえのない存在や生活手段を失ったことをはじめ、避難を余儀なくされ避難生活が長期化していることや放射線への不安を募らせていることが、健康に影響しているということです。 2.福島県 県民健康調査 福島県では、将来にわたり福島県民の健康を見守っていくための取り組みとして、事故発生から3か月後の2011年7月から「県民健康管理調査」を開始し、2014年度から「県民健康調査」に名称を変更し、調査を継続しています。この調査には、「基本調査」と「詳細調査」があります。 基本調査 「基本調査」は全県民を対象とするもので、問診票によって事故が発生した2011年3月11日以降の行動などを把握して、7月11日までの4か月間に外部被ばくした量を推計するための調査です。2014年10月末現在、調査の対象となる205万5383人のうち、53万1691人の推計作業が完了しています。 このうち、放射線業務従事経験者と推計期間が4か月未満の方を除く44万4362人の推計結果をみると、約94%が2ミリシーベルト未満で、最高値は25ミリシーベルト、平均値は0.8ミリシーベルトとなっています。福島県の検討委員会では、この結果について「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価しています。 詳細調査 「詳細調査」には、甲状腺超音波検査や避難区域などの住民を対象にして検査項目を充実させた健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査、妊産婦に関する調査などがあります。 甲状腺超音波検査は、震災時に0歳~18歳までの全県民(県外への避難者も含む)約37万人を対象として、2011年10月から2014年3月末まで先行調査が実施されました。2014年4月からは、事故直後の2011年4月2日から1年間に産まれた新生児も対象に加えて、2016年3月までを目途に本格調査が実施されています。 2014年10月末現在、29万4012人(99.2%)がA判定、2240人(0.8%)がB判定(二次検査を要する)、1人がC判定(直ちに二次検査を要する)となり、二次検査で109人が悪性ないしは悪性の疑いがあるとされています。 この結果について多くの専門家は、UNSCEARの見解と同様に、かつてない大規模な検査を行ったことにより無症状で健診を受けなければ発見されなかった症例が多数見つかったと推定しています。環境省が福島県での検査結果を客観的に検証するために3県(青森県、山梨県、長崎県)で実施した甲状腺の超音波検査でも、福島県の子供の症例の頻度は3県の子供と同様であることが明らかにされています。 現在の症例や頻度は「事故の影響によるものとは考えにくい」との指摘があるものの、福島県の検討委員会では、こうした所見やこれまでに明らかになった甲状腺被ばく線量などを参考にして、放射線被ばくと甲状腺がん発症との因果関係の検討を行っています。 そのほかの検査 「県民健康調査」のほかにも、ホールボディカウンターを用いた内部被ばくの検査も行われています。2011年6月~2014年11月の累計で23万3225人が検査を受け、1ミリシーベルト未満が23万3199人、1~3ミリシーベルトが26人で、それ以上の内部被ばくをした人はいませんでした。 福島県 県民健康調査について 福島県立医科大学は、福島県の委託を受け、平成23年9月「放射線医学県民健康管理センター」を立ち上げ、県民健康調査を実施しています。この調査は震災、原発事故後の福島県民の皆様の健康を長期にわたって見守り、安全・安心の確保を図ることを目的としています。 この事業では、甲状腺検査結果についてクローズアップされることが多いですが、そのほかにも「健康診査」、「こころの健康度・生活習慣に関する調査」や「妊産婦に関する調査」など、調査を通じてハイリスクと思われる個々の方への支援にも注力しています。支援を通じて、「これまで家族にも話せなかった不安を相談できた」、「何か気になったことがあればここで相談に乗ってもらえると分かって少し安心した」といった声をいただいています。 3年にわたる調査を経て、次第に県民の皆様の心身の様子が分かってきました。県民健康調査は、単に調査、検査を継続するだけに留まらず、その結果を受けて、市町村と連携し、いかに県民の皆様の健康維持、管理策や体制を組んでいくかという新たな局面に入ってきました。今後も丁寧に県民の皆様に寄り添い見守ることで、健康長寿県となることを目指してまいります。 公立大学法人福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 国際連携・コミュニケーション部門長 松井史郎 福島県・県民健康調査について 3.実際の食品や食事の調査 厚生労働省は2012年~2013年にかけて、「マーケットバスケット方式」の調査を行いました。これは、全国各地で実際に流通している食品を購入して、そのままの状態や加工・調理した後の放射性セシウムの量を測定し、平均的な食生活をしたときに追加的に受ける放射線量を推計するものです。 また、ほぼ同時期に、一般家庭で実際に調理された食事を集め、それに含まれる放射性セシウムの量を測定して、その食事から受ける放射線量を推計する、「陰膳方式」の調査も行われました。 その結果、いずれの調査でも、1年間に食品中の放射性セシウムから受ける放射線の量は、0.01ミリシーベルトを下回りました。 食品には、もともとカリウム40など天然の放射性物質が含まれています。「マーケットバスケット方式」や「陰膳方式」の調査による放射性セシウムの推定年間放射線量は、この天然のカリウム40による放射線量(約0.2ミリシーベルト/年)の数十分の1となっています。 「マーケットバスケット方式」の調査は、福島第一原子力発電所の事故直後にも福島県や宮城県、東京都で行われました。このうち、福島県(中通り)の結果をみると、年間の放射線量は0.019ミリシーベルトでしたが、その半年後には0.0066ミリシーベルトへと、大きく減少しています。 なお、2012年~2013年にかけての調査では、放射性セシウム以外の放射性物質の測定も行われました。放射性ストロンチウムの濃度は事故以前の範囲内か同程度で、放射性プルトニウムは検出されませんでした。 4.食品の検査の状況 福島県産の農林水産物は、出荷前に検査が実施されています。放射性物質の基準値を超過した場合には、品目ごとに市町村単位で出荷が制限されるため、流通している農林水産物は安全性が確保されています。 2014年4~9月の検査では、玄米や野菜・果実、畜産物に基準値を超過したものはありませんでした。山菜・キノコや水産物には、基準値を超過したものがありましたが、事故からの時間の経過にともない超過割合は減少しています。 なお、玄米については、福島県内全域ですべての米袋の検査が行われ、検査済みの玄米を使用した精米の袋には、「安全な福島のお米」と確認できるシールが貼られています。 5.除染やインフラ復旧などの状況と、住民の帰還 福島県内の市町村が除染を実施する地域では、着実に除染作業が進められています。2014年8月末時点での進捗数は、住宅が約5割、公共施設等が約7割、道路が約3割、農地(水田+畑地+樹園地+牧草地)が約7割などとなっています。 また、2014年9月末現在、被災した公共土木施設の88%で復旧工事に着手し、全体の66%が完了しています。なお、避難指示区域では、「避難指示解除準備区域」内はすでに災害査定が終了していますが、「居住制限区域」と「帰還困難区域」では災害査定が終了しておらず、国が実施する除染などと調整を測りながら進められる予定となっています。 インフラや医療・介護・郵便などの生活関連サービスがおおむね復旧し、子供の生活環境の除染が進捗したことから、2014年4月に田村市都路地区、2014年10月に川内村の一部で避難指示が解除され、生活上の制限を受けない住民の帰還ができるようになりました。 PDFでもご覧いただけます PDFでみる この記事に登録されたタグ UNSCEARニュースがわかる!トピックス福島第一原子力発電所 このページをシェアする 関連記事 低線量の放射線による影響福島県民の健康調査は、どうしているの?福島第一原子力発電所の事故から5年、今の福島の状況は?食品中の放射性物質に関する新基準値 Copyright(C) Japan Atomic Energy Relations Organization All Rights Reserved.
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福島第一原子力発電所の事故による 健康や食品への影響は? 復旧の状況は?
ニュースがわかるトピックス
1.UNSCEAR 2013年報告書
2014年4月2日に、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)から、福島第一原子力発電所の事故に関する「2011年東日本大震災後の原子力事故による 放射線被ばくのレベルと影響」という報告書が公表されました。
世界18か国から、さらにはさまざまな国際機関から派遣された専門家が多数参画し、放射性物質の拡散や住民・作業員の被ばく線量の評価とその健康への影響の推定など、多岐にわたる内容をまとめています。
放射性物質の放出について
事故によって大気中へ放出されたヨウ素131の総量は、約100~500ペタベクレル(ペタは千兆)の範囲、セシウム137は6~20ペタベクレルの範囲であったと推定しています。これは、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故における推定放出量のそれぞれおよそ10%と20%になります。
また、海洋へ直接放出されたセシウム137の総量は、約3~6ペタベクレルの範囲で、ヨウ素131はその約3倍の10~20ペタベクレル程度であるとしています。
住民の被ばく線量の評価と、健康への影響について
福島県で事故の影響を最も受けた地域の成人住民が事故発生から1年間に受けた放射線の実効線量は、約1~10ミリシーベルトの範囲で、放射線の影響を受けやすい1歳児は成人の値よりも約1.5倍から2倍ほど高いと推定しています。
このレベルの被ばくは、がんのリスクがわずかに高まる可能性はありますが、その割合は日本人の自然発生がんのリスクに比べ小さすぎるため、集団全体として検出することはできないだろうと指摘しています。
また、甲状腺の吸収線量は、特に発電所から20km圏内の住民は迅速な避難によって、受ける線量を大幅に低減することができたとし、成人で最大35ミリグレイ程度、1歳児で最大約80ミリグレイ程度と推定しています。ただし、この推定値には不確かさがあり、報告された実測値からみると最大で5倍程度高く推定されている可能性があります。
甲状腺への影響については、吸収線量がチェルノブイリ原子力発電所事故後の線量より大幅に低いため、福島県でチェルノブイリ原子力発電所の事故時のように放射線に誘発された甲状腺がんが多数発生すると考える必要はないとしています。
福島県が実施している超音波検査で、比較的多数の甲状腺所見が見つかっていることは、事故の影響を受けていない他の地域で行われた同様の調査結果と一致していることから、このような集中的な健診がなければ通常は検出されなかったであろうとされています。そのため、甲状腺所見が今後も比較的多く見つかると予測しています。
このほか、胎児や幼少期・小児期に被ばくした人の白血病や、若年期に被ばくした人の乳がんについても、統計学的な差として自然発生率と識別できるレベルで発生率が上がることは予測されず、妊娠中の被ばくによる流産、周産期死亡率、先天的な影響、認知障害、遺伝的な影響などが起こることもないと述べています。
一方、UNSCEARでは、これまでに観察された最も重要な健康影響は、心理的・精神的な影響であるとしています。これは、地震や津波によって家族・友人などかけがえのない存在や生活手段を失ったことをはじめ、避難を余儀なくされ避難生活が長期化していることや放射線への不安を募らせていることが、健康に影響しているということです。
2.福島県 県民健康調査
福島県では、将来にわたり福島県民の健康を見守っていくための取り組みとして、事故発生から3か月後の2011年7月から「県民健康管理調査」を開始し、2014年度から「県民健康調査」に名称を変更し、調査を継続しています。この調査には、「基本調査」と「詳細調査」があります。
基本調査
「基本調査」は全県民を対象とするもので、問診票によって事故が発生した2011年3月11日以降の行動などを把握して、7月11日までの4か月間に外部被ばくした量を推計するための調査です。2014年10月末現在、調査の対象となる205万5383人のうち、53万1691人の推計作業が完了しています。
このうち、放射線業務従事経験者と推計期間が4か月未満の方を除く44万4362人の推計結果をみると、約94%が2ミリシーベルト未満で、最高値は25ミリシーベルト、平均値は0.8ミリシーベルトとなっています。福島県の検討委員会では、この結果について「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価しています。
詳細調査
「詳細調査」には、甲状腺超音波検査や避難区域などの住民を対象にして検査項目を充実させた健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査、妊産婦に関する調査などがあります。
甲状腺超音波検査は、震災時に0歳~18歳までの全県民(県外への避難者も含む)約37万人を対象として、2011年10月から2014年3月末まで先行調査が実施されました。2014年4月からは、事故直後の2011年4月2日から1年間に産まれた新生児も対象に加えて、2016年3月までを目途に本格調査が実施されています。
2014年10月末現在、29万4012人(99.2%)がA判定、2240人(0.8%)がB判定(二次検査を要する)、1人がC判定(直ちに二次検査を要する)となり、二次検査で109人が悪性ないしは悪性の疑いがあるとされています。
この結果について多くの専門家は、UNSCEARの見解と同様に、かつてない大規模な検査を行ったことにより無症状で健診を受けなければ発見されなかった症例が多数見つかったと推定しています。環境省が福島県での検査結果を客観的に検証するために3県(青森県、山梨県、長崎県)で実施した甲状腺の超音波検査でも、福島県の子供の症例の頻度は3県の子供と同様であることが明らかにされています。
現在の症例や頻度は「事故の影響によるものとは考えにくい」との指摘があるものの、福島県の検討委員会では、こうした所見やこれまでに明らかになった甲状腺被ばく線量などを参考にして、放射線被ばくと甲状腺がん発症との因果関係の検討を行っています。
そのほかの検査
「県民健康調査」のほかにも、ホールボディカウンターを用いた内部被ばくの検査も行われています。2011年6月~2014年11月の累計で23万3225人が検査を受け、1ミリシーベルト未満が23万3199人、1~3ミリシーベルトが26人で、それ以上の内部被ばくをした人はいませんでした。
福島県 県民健康調査について
福島県立医科大学は、福島県の委託を受け、平成23年9月「放射線医学県民健康管理センター」を立ち上げ、県民健康調査を実施しています。この調査は震災、原発事故後の福島県民の皆様の健康を長期にわたって見守り、安全・安心の確保を図ることを目的としています。
この事業では、甲状腺検査結果についてクローズアップされることが多いですが、そのほかにも「健康診査」、「こころの健康度・生活習慣に関する調査」や「妊産婦に関する調査」など、調査を通じてハイリスクと思われる個々の方への支援にも注力しています。支援を通じて、「これまで家族にも話せなかった不安を相談できた」、「何か気になったことがあればここで相談に乗ってもらえると分かって少し安心した」といった声をいただいています。
3年にわたる調査を経て、次第に県民の皆様の心身の様子が分かってきました。県民健康調査は、単に調査、検査を継続するだけに留まらず、その結果を受けて、市町村と連携し、いかに県民の皆様の健康維持、管理策や体制を組んでいくかという新たな局面に入ってきました。今後も丁寧に県民の皆様に寄り添い見守ることで、健康長寿県となることを目指してまいります。
公立大学法人福島県立医科大学
放射線医学県民健康管理センター
国際連携・コミュニケーション部門長 松井史郎
福島県・県民健康調査について
3.実際の食品や食事の調査
厚生労働省は2012年~2013年にかけて、「マーケットバスケット方式」の調査を行いました。これは、全国各地で実際に流通している食品を購入して、そのままの状態や加工・調理した後の放射性セシウムの量を測定し、平均的な食生活をしたときに追加的に受ける放射線量を推計するものです。
また、ほぼ同時期に、一般家庭で実際に調理された食事を集め、それに含まれる放射性セシウムの量を測定して、その食事から受ける放射線量を推計する、「陰膳方式」の調査も行われました。
その結果、いずれの調査でも、1年間に食品中の放射性セシウムから受ける放射線の量は、0.01ミリシーベルトを下回りました。
食品には、もともとカリウム40など天然の放射性物質が含まれています。「マーケットバスケット方式」や「陰膳方式」の調査による放射性セシウムの推定年間放射線量は、この天然のカリウム40による放射線量(約0.2ミリシーベルト/年)の数十分の1となっています。
「マーケットバスケット方式」の調査は、福島第一原子力発電所の事故直後にも福島県や宮城県、東京都で行われました。このうち、福島県(中通り)の結果をみると、年間の放射線量は0.019ミリシーベルトでしたが、その半年後には0.0066ミリシーベルトへと、大きく減少しています。
なお、2012年~2013年にかけての調査では、放射性セシウム以外の放射性物質の測定も行われました。放射性ストロンチウムの濃度は事故以前の範囲内か同程度で、放射性プルトニウムは検出されませんでした。
4.食品の検査の状況
福島県産の農林水産物は、出荷前に検査が実施されています。放射性物質の基準値を超過した場合には、品目ごとに市町村単位で出荷が制限されるため、流通している農林水産物は安全性が確保されています。
2014年4~9月の検査では、玄米や野菜・果実、畜産物に基準値を超過したものはありませんでした。山菜・キノコや水産物には、基準値を超過したものがありましたが、事故からの時間の経過にともない超過割合は減少しています。
なお、玄米については、福島県内全域ですべての米袋の検査が行われ、検査済みの玄米を使用した精米の袋には、「安全な福島のお米」と確認できるシールが貼られています。
5.除染やインフラ復旧などの状況と、住民の帰還
福島県内の市町村が除染を実施する地域では、着実に除染作業が進められています。2014年8月末時点での進捗数は、住宅が約5割、公共施設等が約7割、道路が約3割、農地(水田+畑地+樹園地+牧草地)が約7割などとなっています。
また、2014年9月末現在、被災した公共土木施設の88%で復旧工事に着手し、全体の66%が完了しています。なお、避難指示区域では、「避難指示解除準備区域」内はすでに災害査定が終了していますが、「居住制限区域」と「帰還困難区域」では災害査定が終了しておらず、国が実施する除染などと調整を測りながら進められる予定となっています。
インフラや医療・介護・郵便などの生活関連サービスがおおむね復旧し、子供の生活環境の除染が進捗したことから、2014年4月に田村市都路地区、2014年10月に川内村の一部で避難指示が解除され、生活上の制限を受けない住民の帰還ができるようになりました。
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